賃貸トラブルQ&A・タイトルロゴ

賃貸マンション・アパートにまつわるトラブル(騒音・漏水・煙草・訪問販売・鍵の紛失・共用部分・家賃の滞納・敷金返還・原状回復等々)を、下世話に、馴れ馴れしく、クドクドと、そして極めて偏った立場で解決を試みるサイト「賃貸トラブルQ&A」。役に立つ情報より立たない情報の方が多いかも。最初に謝っておきます。ゴメンナサイ。

賃貸トラブル・ライター

賃貸トラブル・プロフィール画像

Author : ぴーたん

賃貸住宅・火災保険等に長く携わる流れ者。よく出没する場所はホームセンターの駐車場。会う人逢う人に「スマホで宅建」をゴリ押しする「松本佳也推し」でもある。最近の趣味は「拭き掃除」とのこと。

賃貸トラブルQ&A  >  契約・更新トラブル  >  法定更新と、更新料特約

賃貸トラブル・質問

最近WEBで「賃貸住宅の更新料は払わなくてよい?」なんて記事を読んだんだけど…俺も「法定更新」して、更新料の支払い無視しようかな?

賃貸トラブル・合意更新と法定更新の図
賃貸トラブル・回答

この記事鵜呑みにすんなよ!!法定更新でも更新料を有効とした判例もあるぞ。そもそも借地借家法はこんなケースのために存在していない!!

この記事を初めて目にした時からずっと「?」マークが頭の上から消えなくてさ(笑)
ちょいと調べる時間がなくて今日に至ったんだけどさ。
不労所得やら学歴改造が専門のライターさんが、2014年に発売した新刊の宣伝に記事を書いたンだろうけど…
冒頭に断言しちゃうけど、判例が示すようにこの記事は「絶対」じゃない。

①元記事はどんな内容だったの?

全文は「賃貸住宅の更新料は払わなくてよい?家賃引き下げる絶好の機会?その具体的交渉法とは」で読んでおくれ(Business Journal / 2014.10.03)。
削除される場合もあるんで肝心な部分を抜粋すると、

「管理会社から送られてきた契約更新書類、更新する場合は署名捺印して返送するが、これをただ放置しておけばよい。そして、そのまま契約が満了する日まで待ち、満了日以降もこれまでと同じ家賃を払い続ける。もちろん、更新料は1円も払わない。」

「一般の賃貸住宅の契約において、契約期間満了後も家賃を滞納することなく住み続けていれば、たとえ大家と条件面で合意に達していなくても、契約が満了した後、これまでと同じ条件で契約は自動更新されたものとみなすことになっているのである(借地借家法第26条に規定。これを「法定更新」と呼ぶ)。」

「しかも、そうして法定更新された契約は「期間の定めのないものとする」とされているため、一度自動更新してしまえば、これまで2年ごとに払っていた更新料は、よそに引っ越さない限り、永遠に払わなくてよくなる。」


…と、断言しちゃっている。

賃貸トラブル・ガッツポーズの画像

ヲイヲイ、そんな決めつけちゃって大丈夫?(笑)

②判例では「法定更新でも更新料払えよ」って例もある

そう、こういう判例がいくつかある時点で「永遠に払わなくてよくなる」なんて書けないんだよ。無責任にもホドがあるわ(怒)
平成22年の東京地裁での判例では、「本件更新料条項は法定更新の場合にも適用されるものと解すべきであり、X(更新料支払いを拒絶した賃借人)は、Y(貸主)に対して更新料を支払う義務を負う」となってるんだわ。
また平成17年の東京地裁の判例でも「本件がたとえ法定更新であったとしても、本件(更新料)特約は有効とすべきであると考える」という判断が下されてる。

な?「永遠に」でもなければ「絶対」でもないンだよ。
もちろん法定更新下で更新料特約を無効とした判例もある。つまりは司法もまだ意見が割れてる段階なんだわ。最高裁の判例でも出てるンなら、話は別だろうけどさ。
「法定更新なら更新料支払いは不要!!」とか絶対に断言出来ないということは、理解してもらいたいね。

③「法定更新」のデメリットも忘れんなよ

元記事の様に更新料を支払わず「満了日以降もこれまでと同じ家賃を払い続け」住み続けた場合、つまり貸主が居住を容認している場合は貸主が「更新拒絶をして法定更新となったのではなく更新拒絶権や異議権を放棄していると解される」と判断されるんだな。
平たくいえば、「対価ももらえずにかわいそうな大家さん」と理解されてるわけだ。裁判になった場合、不利なのは当然「ワガママな賃借人」ってことだよな(笑)
また更新料の有効性については他の記事でも触れてるよね?「賃料の補充を目的とし、高すぎない」額なら消費者契約法第10条にも抵触しないって判例はいくつもある。

そもそも「法定更新」にしちゃった場合、期間の定めのある契約時に規定されている「貸主都合の解約は6ヶ月以上前に」のが適用されなくなり、貸主はいつだって解約を申し立てることが出来るようになっちゃうのだ。
…無論「正当事由」は必要だし、更新料不払いくらいじゃ解約できないけどね。
ただし他にも積み重なるものがあれば、更新料不払いを端緒に「信頼関係が破壊された」と判断される可能性も、なくはナイのだ。

④保証会社が絡んでるともっとヤヤコシイかもな(笑)

これは他の記事に詳しく書いてあるんで、「家賃滞納しても大丈夫だよね?」を読んでみてよ。
保証会社が更新料も回収代行している場合は、普通に「滞納」として処理するよな。
信販系の会社なら、しばらく放置してりゃめでたくブラックリスト掲載。カードやローン、当然携帯電話の割賦販売も申し込めなくなる。
大手保証会社で家賃情報を共有してる場合は、いざ引っ越して(もしくは追い出されて)違う物件の申込み段階で審査落ちする可能性もある。
保証会社との契約は大体契約書に明示されてるけど、その契約自体は賃借人と保証会社の直接契約だ。つまり、自分で根回ししなければならないってこと。

法定更新にさえ持ち込めば何とかなるような時代でも状況でもない、ってのが現場サイドの感想かな。

【結論】人と人との繋がりだから

家賃交渉については「家賃って下がるの?」でまとめてあるんで興味があるなら読んでみてよ。
俺自身も、家賃減額交渉自体に異論はない。ただしこの記事にも書いてるように、家賃減額交渉なんてのは5〜10年住み続けて、実家賃と募集賃料に大きな隔たりが生じて初めて活きてくるンだわ。
で、その問題と、更新料の是非なんて別問題でしょ?
そもそも更新料を払うのが嫌なら、契約前に交渉しろって話でさ。
「家賃減額に応じないなら更新料払わねーぞ」みたいな脅し文句的な使い方をするもんじゃない。

法人であれ個人であれ、家主もただの「人間」だ。「契約」といえば固くなるが、「人と人の繋がり」に変わりはない。
こんな腐った方法に頼らないで、気持ちよく交渉しようぜ。
「借り手有利」の世の中には、間違いないンだからさ。

このエントリーをはてなブックマークに追加